あづきが行くよ

おまえは密売人かあ〜!


どうやら口は、犬にとって食べ物を食べるためだけでなく、

モノを知る感覚器でもあるようにも思えてくる。

小さい頃のあづき、歯がうずくのか、硬いものを口にし、噛む。

それだけでなく、噛むことはモノの性質を知るのに大事なことなんだろうが、

家の壁や障子の桟をはじめ、木やプラスチックなどをかじり、

かじっているだけかと思うと食べてしまうこともあるのは困ったものだ。


あづきは石もよく咥えて遊ぶ。

先日、川沿いに歩いている時のこと。

道路の匂いを嗅いで道草していると思ったら、さっと前に歩いて行き、

「へへ、石、咥えてるもんね」

みたいな顔をして後ろを振り返り、口の中でコロコロカリカリやっている。

石を食べてお腹に詰まり手術に至ることもあるというネット記事が思い出され、

リードを引いて歩きを止める。

「だして! だして!」

口を大きく開け、手を突っ込む。

拾い食いのクセが付かないように、もし変な物を食べても出すことを覚えるように、

これは訓練でもあると思ってする。

そんなことを繰り返しているうちに、口の動きが止まった。

ん? 飲み込んだのか?

「出せ! 吐け!」と後頭部を叩く。シーン。だめだ、出てこない。

飲んでしまったらしょうがない。「だめだよ」と鼻をポンと叩く。


歩き続けていると、また後ろを振り向いた。コロコロカリカリ音がする。

おちょくっとるのか! なめたらいかんぜよ!

「だして! だして!」

さっき以上の声で叫ぶと、「やだもんねー」と右へ左へ跳ねてかわす。

思うままにさせてなるものかと、リードを引いて首元を押さえる。

よけい抵抗するあづき。口をつかみ、両手で大きく開ける。

と、シーン。またも飲み込んでしまった…。

「おまえは麻薬の密売人かあ〜!」